【ストーリーで学ぶ】居酒屋3店舗経営の会社がトライアル雇用助成金で12万円を獲得するまで
この記事について
この記事は、架空の会社「株式会社フジヤマフーズ」がトライアル雇用助成金を活用し、未経験者採用に成功するまでの体験談形式で構成しています。
人手不足に悩む飲食店経営者が抱える「未経験者を採用したいけど、すぐ辞められたら困る」という悩みに対し、トライアル雇用制度がどのように解決策となるのかを、リアルなストーリーを通じて解説します。
注意: 登場する会社・人物は架空のものですが、手続きや金額は2026年1月時点の実際の制度に基づいています。
登場人物
| 名前 | 役職 | 特徴 |
|---|---|---|
| 藤山健太(48歳) | 代表取締役 | 脱サラして居酒屋を開業、今年で15年目。現場主義だが人材育成に悩む |
| 木村美咲(32歳) | 店長兼人事担当 | 採用活動に奔走中、助成金は未経験 |
| 高橋翔太(26歳) | 採用予定者 | コンビニ勤務からの転職希望者、飲食業未経験 |
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社フジヤマフーズ(架空) |
| 業種 | 飲食業(居酒屋3店舗経営) |
| 従業員数 | 25名(正社員8名、パート17名) |
| 所在地 | 東京都立川市 |
| 年商 | 約1億5,000万円 |
第1章: きっかけ ― 「経験者が来ない」
4月のある日、藤山社長の苦悩
立川駅から徒歩5分。株式会社フジヤマフーズが運営する居酒屋「藤乃屋」本店の事務所で、藤山健太社長は求人サイトの画面を見つめていた。
「木村さん、今月の応募、何件だった?」
店長の木村美咲が重い口を開く。
「3件です。でも、3件とも経験者じゃなくて…」
「経験者は1人も来ないか…」
藤山社長はため息をついた。
もう3ヶ月、正社員を募集し続けている。時給の高いパートはなんとか集まるが、正社員となると話は別だ。特に、飲食業経験のある人材は、大手チェーンに流れてしまう。
「未経験者を採るしかないか…」
「社長、未経験者でも真面目そうな人はいるんです。今日面接した高橋さんって方、コンビニで4年働いていて、接客の基本はできてます」
木村の言葉に、藤山社長は首を振った。
「木村さんの気持ちはわかる。でもな、うちは忙しい。未経験者を一から教える余裕がない。3ヶ月かけて教えて、『やっぱり合いませんでした』って辞められたら、どうする?」
これが藤山社長の本音だった。
飲食業は離職率が高い。未経験者の場合、「思っていたのと違った」という理由で早期離職するケースは珍しくない。教育にかけた時間と人件費が、水の泡になる。
「でも、経験者を待っていたら、いつまでも人が足りないままです…」
木村は困った顔をした。
第2章: 調査 ― ハローワークで知った「トライアル雇用」
経験者が来ないなら、発想を変えるしかない
翌週、藤山社長は意を決して立川公共職業安定所(ハローワーク立川)を訪れた。
「求人を出しているんですが、経験者が全然来なくて。未経験者を採用するしかないんですが、何かいい方法はありませんか」
窓口の担当者は、パンフレットを差し出した。
「トライアル雇用制度をご存知ですか?」
「トライアル…試用期間みたいなものですか?」
「はい。3ヶ月間の試行雇用期間を設けて、その間に適性を見極める制度です。労働者側も『自分に合うか』を確認できますし、企業側も『この人で大丈夫か』を判断できます」
「しかも、助成金が出るんです」
担当者は続けた。
「トライアル雇用で雇い入れた場合、1人あたり月額4万円、最大3ヶ月で12万円の助成金が支給されます」
「12万円…!」
藤山社長の目の色が変わった。
「でも、条件があるんですよね? うちみたいな小さな会社でも対象になりますか?」
「雇用保険に加入していれば、企業規模は問いません。ただ、対象となる求職者には条件があります」
担当者が説明してくれた条件は、次の通りだった。
トライアル雇用の対象となる求職者の主な条件:
- 2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している
- 離職期間が1年を超えている
- 育児等で離職し、1年以上安定した職業に就いていない
- 生活保護受給者、母子家庭の母等
- その他、就職に特別な配慮が必要
「なるほど…。さっき木村が面接した高橋さんって人、確か1年以上ブランクがあるって言ってたな」
「お試し期間」という発想
藤山社長の頭の中で、パズルのピースがはまった。
「つまり、3ヶ月間は『お試し期間』で、お互いに相性を確認できる。その間に助成金までもらえる。合わなければ、3ヶ月で契約終了にもできる…ということですか?」
「そうです。もちろん、最初から『3ヶ月で辞めさせよう』という意図での採用は認められませんが、適性を見極めるための期間として活用していただけます」
採用リスクの軽減。
これこそ、藤山社長が求めていたものだった。
12万円という金額自体は、正直それほど大きくない。しかし、「未経験者を試しに採用してみる」というハードルが、ぐっと下がった気がした。
第3章: 準備 ― 意外と簡単だったトライアル求人
ハローワーク求人に切り替える
藤山社長は木村に報告した。
「トライアル雇用という制度がある。求人をハローワーク経由に切り替えてくれないか」
「ハローワークですか? うち、今まで求人サイトしか使ってませんでしたけど…」
「俺も最初は抵抗があった。でも、話を聞いてみたら、ハローワークの求人は無料だし、手続きも難しくなさそうだ」
求人票の作成
木村は翌週、ハローワークを訪れた。
「トライアル雇用求人を出したいのですが…」
窓口で「トライアル雇用求人」として登録したい旨を伝えると、求人票の書き方を丁寧に教えてもらえた。
通常の求人との違い:
- 求人票に「トライアル雇用併用求人」と記載される
- トライアル期間(原則3ヶ月)を明示する
- トライアル期間中の労働条件を記載する
「思ったより簡単でした」
木村は社長に報告した。
「あとは、対象となる求職者がハローワーク経由で応募してくれるのを待つだけです」
高橋翔太からの再応募
求人を出して2週間。ハローワークから連絡が入った。
「求人に興味を持っている方がいます。高橋翔太さん、26歳。コンビニ勤務経験があり、飲食業は未経験です。1年4ヶ月の離職期間があり、トライアル雇用の対象となります」
「高橋さん…! 前にうちに応募してくれた人だ!」
木村は驚いた。あのとき「経験者優先」で見送った応募者が、ハローワーク経由で再び現れたのだ。
第4章: 申請 ― トライアル雇用実施計画書の提出
面接、そして採用決定
5月15日、高橋翔太との面接が行われた。
「飲食業は未経験ですが、接客には自信があります。コンビニでは深夜シフトも一人で回していました。体力には自信があります」
藤山社長は尋ねた。
「正直に聞くよ。なぜ1年以上、働いていなかったんだ?」
高橋は少し言いよどんだ後、答えた。
「前の会社を辞めた後、何がやりたいのかわからなくなって…。でも、ようやく『人と接する仕事がしたい』と思えるようになりました。居酒屋なら、お客さんと直接話せる。それが楽しそうだと思ったんです」
藤山社長は頷いた。
「わかった。うちでトライアル雇用として働いてみないか。3ヶ月間、お互いに合うかどうか確認しよう」
計画書の提出
採用を決めたら、すぐにやるべきことがある。
「トライアル雇用実施計画書」の提出だ。
ハローワークで教えてもらった通り、木村は計画書を作成した。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 雇入れ日 | 2026年6月1日 |
| トライアル期間 | 2026年6月1日〜2026年8月31日(3ヶ月) |
| 週所定労働時間 | 40時間 |
| 業務内容 | ホール業務、接客、簡単な調理補助 |
| 本採用後の雇用形態 | 正社員 |
重要なのは、提出期限だ。
トライアル雇用実施計画書は、雇入れ日から2週間以内にハローワークに提出しなければならない。
6月10日、木村は計画書をハローワークに提出した。
「受理されました。3ヶ月後に支給申請をしてくださいね」
第5章: 待機 ― 3ヶ月間の「お試し期間」
最初の1ヶ月、苦戦する高橋
6月。高橋翔太のトライアル雇用が始まった。
しかし、最初の1ヶ月は苦戦の連続だった。
「高橋くん! ビールジョッキは両手で持って! 片手だとこぼすから!」
「すみません!」
「オーダー通し間違えてるよ! 枝豆2つじゃなくて、枝豆1つと冷奴1つ!」
「すみません…!」
木村は内心、不安になった。
「社長、高橋さん、大丈夫でしょうか…」
「まあ、最初はそんなもんだ。未経験なんだから。問題は、同じミスを繰り返すかどうかだ」
変化が見えた2ヶ月目
7月に入ると、高橋に変化が見え始めた。
メモを取るようになった。先輩スタッフに積極的に質問するようになった。
「高橋くん、最近いいね。常連さんの顔と名前、覚えてきたでしょ」
「はい! 佐藤さんはハイボール濃いめ、田中さんは刺身盛り合わせが好き、って覚えました」
接客業で最も大切なのは、お客様を覚えること。高橋はそれを自然とできるようになっていた。
3ヶ月目、ついに戦力に
8月。トライアル期間最後の月。
「高橋くん、今日から一人で4番テーブル担当してみて」
木村が指示すると、高橋は緊張した面持ちで頷いた。
その日の閉店後、木村は藤山社長に報告した。
「社長、高橋くん、一人で回せてました。お客さんからの『ありがとう』にちゃんと笑顔で返せてたし、追加オーダーの声かけもできてました」
藤山社長は満足げに頷いた。
「3ヶ月で、ここまで成長するとはな。正直、途中で『ダメかも』と思った時期もあったが…」
「私もです。でも、本人の頑張りが大きかったと思います」
第6章: 支給申請 ― 本採用と助成金
9月1日、正社員へ
8月31日でトライアル期間が終了。
9月1日、高橋翔太は正社員として本採用となった。
「高橋くん、3ヶ月お疲れ様。今日から正社員だ。これからも頼むよ」
「ありがとうございます! 最初は不安でしたけど、皆さんに教えていただいて、ここまで来れました」
高橋の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
支給申請書の作成
本採用が決まったら、いよいよ支給申請だ。
木村は「トライアル雇用助成金支給申請書」を作成した。
必要書類:
- トライアル雇用助成金支給申請書
- トライアル雇用実施計画書(受理印があるもの)
- トライアル雇用結果報告書兼支給申請書
- 出勤簿(トライアル期間中のもの)
- 賃金台帳(トライアル期間中のもの)
- 雇用契約書(トライアル期間中・本採用後)
「書類、揃いました。これをハローワークに提出すればいいんですね」
提出期限は、トライアル期間終了日の翌日から2ヶ月以内。
9月15日、木村は支給申請書をハローワークに提出した。
審査期間
「審査には1〜2ヶ月程度かかります。支給決定通知書が届くまでお待ちください」
また待つのか…。でも、ここまで来たら待つしかない。
木村は日々の業務に戻った。高橋は正社員として、着実に成長を続けていた。
第7章: 受給 ― 「12万円、入ってました!」
11月のある朝
11月中旬。木村が会社の通帳を記帳すると…
「ロウドウキョク 120,000」
「入ってる! 社長、助成金入ってました!」
木村は思わず声を上げた。
藤山社長は静かに笑った。
「そうか、入ったか。でもな、木村さん」
「はい?」
「12万円よりも、高橋くんがうちの戦力になってくれたことのほうが、よっぽど価値がある」
後日談:高橋の成長
12月。忘年会シーズンで店は大忙しだった。
「高橋くん、3番テーブルの予約対応お願い!」
「はい!」
高橋は今や、新人パートに指導する立場になっていた。
「こうやってお客さんに声をかけるんですよ。『お飲み物、もう一杯いかがですか?』って」
木村は、その姿を見て思った。
「あのとき、トライアル雇用を知らなかったら、高橋くんを採用できてなかったかもしれない…」
藤山社長の振り返り
年末、藤山社長は木村と話をした。
「木村さん、今年一番の収穫は何だと思う?」
「高橋くんの採用…ですか?」
「それもある。でも俺は、『未経験者でもいける』って確信が持てたことだと思うんだ」
藤山社長は続けた。
「今まで俺は、経験者じゃなきゃダメだと思い込んでいた。でも、トライアル雇用という『お試し期間』があれば、未経験者を採用するリスクはかなり下がる。12万円の助成金も、そのリスク軽減の後押しになった」
「確かに…。経験者を待ち続けるより、未経験でもやる気のある人を育てたほうが、長い目で見たらプラスですよね」
「その通りだ。来年も、トライアル雇用を活用して採用していこう」
まとめ: フジヤマフーズから学ぶ5つの教訓
教訓1: 経験者にこだわらない
飲食業界の人手不足は深刻です。経験者を待ち続けるより、未経験者を育てる発想に切り替えることで、採用の幅が広がります。
教訓2: トライアル雇用は「双方にメリット」
3ヶ月の試行期間は、企業にとっては「適性を見極める期間」、求職者にとっては「自分に合うか確認する期間」。どちらにとってもメリットがあります。
教訓3: 12万円の本当の価値
月額4万円×3ヶ月=12万円。金額としては大きくありませんが、「未経験者採用に踏み切る後押し」としての価値があります。
教訓4: 手続きは意外と簡単
トライアル雇用求人はハローワークで出せます。計画書の提出期限(雇入れ日から2週間以内)さえ守れば、手続きは難しくありません。
教訓5: 人材育成の意識が変わる
「お試し期間」があることで、「最初からできなくて当然」という前提で育成に取り組めます。結果的に、丁寧な教育につながります。
あなたの会社でも、同じことができます
フジヤマフーズは特別な会社ではありません。
- 居酒屋3店舗経営
- 従業員25名の中小企業
- 助成金申請は初挑戦
それでも、トライアル雇用助成金を活用し、未経験者の採用に成功しました。
あなたの会社でも、きっとできます。
次のステップ
今すぐできる3つのアクション:
1. ハローワークで「トライアル雇用求人」について相談する
2. 現在の求人を「トライアル雇用併用求人」に切り替える
3. 未経験者でも育成できる業務を洗い出す
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参考リンク
*この記事の登場人物・会社は架空のものです。手続きや金額は2026年1月時点の実際の制度に基づいています。*