この記事でわかること
- 助成金申請で失敗する5つの典型パターン
- 申請前に必ず確認すべき10のチェックポイント
- 書類作成のコツと時短テクニック
- 自社申請 vs 専門家依頼の判断基準
なぜ助成金申請は失敗するのか?
「申請したのに不支給になった...」
「書類の不備で何度もやり直しになった...」
助成金の申請経験がある企業の多くが、こうした苦い経験をお持ちではないでしょうか。
厚生労働省の助成金は、要件を満たせば受給できる制度です。しかし、申請の約3割が書類不備や要件未達で不支給になるとも言われています。
この記事では、申請で失敗しないためのコツと効率的な申請方法を解説します。
助成金申請で失敗する5つの典型パターン
パターン1: 計画届・申請の期限を過ぎてしまう
最も多い失敗パターンです。
ほとんどの助成金には「事前届出」と「申請期限」があります。
| 助成金 | 事前届出期限 | 申請期限 |
|---|---|---|
| キャリアアップ助成金 | 転換の1ヶ月前まで | 転換後6ヶ月経過〜2ヶ月以内 |
| 人材開発支援助成金 | 訓練開始の1ヶ月前まで | 訓練終了後2ヶ月以内 |
| 両立支援等助成金 | 育休取得前に面談実施 | 育休開始から3ヶ月後〜2ヶ月以内 |
対策:
- 助成金ごとの期限を一覧表にまとめる
- カレンダーアプリにリマインダーを設定
- 期限の1週間前にアラートを設定
パターン2: 対象要件を満たしていない
「うちの会社も対象だと思っていたのに...」
助成金には細かい要件があり、1つでも満たしていないと不支給になります。
よくある勘違い:
- 「パートでも対象」→ 雇用保険被保険者であることが必要
- 「研修なら何でも対象」→ 職務に関連した訓練のみ
- 「正社員化すればOK」→ 賃金3%以上の増額が必要
対策:
- 申請前に労働局に確認する
- 要件チェックリストを作成する
- 対象外条件も必ず確認する
パターン3: 書類に不備がある
書類不備は申請の手戻りの最大原因です。
よくある不備:
- 押印漏れ・記入漏れ
- 添付書類の不足
- 計算ミス(賃金計算、訓練時間など)
- 就業規則の記載不足
対策:
- 提出前にダブルチェック
- チェックリストを使って確認
- 可能なら別の担当者に確認してもらう
パターン4: 実施内容と申請内容が一致しない
計画通りに実施しなかった場合、不支給になります。
よくある事例:
- 訓練時間が計画より短かった
- 育休期間が予定より短くなった
- 転換後の労働条件が計画と異なった
対策:
- 計画変更がある場合は事前に届出
- 実施記録を正確に残す
- 計画と実績の照合を行う
パターン5: 支給対象外の経費を含めてしまう
経費助成がある助成金で特に注意が必要です。
対象外の例:
- 交通費・宿泊費(人材開発支援助成金)
- 飲食代
- 汎用性のある機器購入費
- 社内の会議室使用料
対策:
- 対象経費の範囲を事前に確認
- 領収書は細目が分かる形で保管
- 不明な場合は労働局に確認
申請前に確認すべき10のチェックポイント
基本要件チェック
1. 雇用保険の適用事業所ですか?
ほぼすべての雇用関係助成金で必須の要件です。
2. 対象となる労働者は雇用保険被保険者ですか?
週20時間以上勤務で、31日以上の雇用見込みがあることが必要です。
3. 労働関係法令を遵守していますか?
最低賃金法違反、36協定違反などがあると不支給になります。
4. 過去3年以内に不正受給をしていませんか?
不正受給があった場合、3年間は助成金を受給できません。
事前準備チェック
5. 就業規則は整備されていますか?
多くの助成金で、関連する制度が就業規則に規定されていることが必要です。
6. 計画届の提出期限を把握していますか?
事前届出が必要な助成金は、期限を1日でも過ぎると申請できません。
7. 必要な書類を把握していますか?
助成金ごとに必要書類が異なります。事前に一覧を作成しましょう。
実施時チェック
8. 実施記録を残していますか?
訓練日誌、面談シート、出勤簿など、実施の証拠となる書類を整備します。
9. 経費の領収書を保管していますか?
経費助成がある助成金では、領収書・請求書の保管が必須です。
10. 計画変更の届出が必要ではありませんか?
当初の計画から変更がある場合、事前の届出が必要なケースがあります。
書類作成のコツと時短テクニック
コツ1: テンプレートを最大限活用する
厚生労働省のウェブサイトには、各助成金の申請様式がダウンロードできます。
活用すべき資料:
- 支給申請書(Excel形式)
- 記載例・記入上の注意
- よくある質問(FAQ)
- パンフレット・ガイドブック
コツ2: 記入例を見ながら作成する
初めての申請では、記入例を横に置いて作成しましょう。
記入例の入手方法:
- 厚生労働省のウェブサイト
- 各労働局のウェブサイト
- ハローワークの窓口
コツ3: 必要書類リストを作成する
申請書類は多岐にわたるため、チェックリストを作成して漏れを防ぎます。
共通して必要な書類の例:
- 支給申請書
- 就業規則(該当箇所)
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 出勤簿・タイムカード
- 賃金台帳
- 会社の登記事項証明書
コツ4: 電子申請を活用する
2026年現在、多くの助成金で電子申請が可能です。
電子申請のメリット:
- 24時間いつでも申請可能
- 郵送の手間・コストが不要
- 入力ミスのチェック機能あり
- 申請状況をオンラインで確認可能
利用方法:
1. e-Govアカウントを作成
2. GビズIDを取得
3. 「雇用関係助成金ポータル」から申請
コツ5: 過去の申請書類を保管・再利用する
一度申請した助成金は、次回以降の申請がスムーズになります。
保管すべき書類:
- 提出した申請書のコピー
- 添付した書類のコピー
- 労働局からの照会・指摘事項
- 審査のポイントメモ
自社申請 vs 専門家依頼の判断基準
自社申請に向いているケース
以下に該当する場合は、自社申請を検討できます:
- 過去に同じ助成金の申請経験がある
- 社内に労務管理の担当者がいる
- 申請対象者が1〜2名程度
- 時間的な余裕がある
自社申請のメリット:
- 専門家への報酬が不要
- 社内にノウハウが蓄積される
- 制度への理解が深まる
自社申請のデメリット:
- 書類作成に時間がかかる
- 不備による手戻りのリスク
- 最新の制度変更への対応が必要
専門家(社労士)への依頼に向いているケース
以下に該当する場合は、専門家への依頼を検討しましょう:
- 初めての助成金申請
- 複数の助成金を同時に申請したい
- 申請対象者が多い
- 本業に集中したい
専門家依頼のメリット:
- 書類作成の手間が大幅に削減
- 不支給リスクの低減
- 受給可能な他の助成金の提案
- 最新情報への対応
専門家依頼のデメリット:
- 報酬が必要(成功報酬が一般的)
- 社内にノウハウが蓄積されにくい
報酬の相場
社労士に助成金申請を依頼する場合の報酬相場は以下の通りです。
| 報酬体系 | 相場 |
|---|---|
| 成功報酬型 | 受給額の15〜25% |
| 固定報酬型 | 5万円〜20万円/件 |
| 顧問契約 | 月額2万円〜5万円 |
注意点:
- 着手金が必要なケースもある
- 不支給の場合の取り決めを確認
- 複数の事務所から見積もりを取る
助成金申請のスケジュール例
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の場合
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3ヶ月前 | キャリアアップ計画書の作成開始 |
| 2ヶ月前 | 就業規則の確認・整備 |
| 1ヶ月前まで | キャリアアップ計画届の提出 |
| 転換日 | 正社員への転換実施 |
| 転換後1〜6ヶ月 | 継続雇用、賃金支払い |
| 転換後6〜8ヶ月 | 支給申請書の提出 |
| 申請後2〜3ヶ月 | 審査・支給決定 |
人材開発支援助成金の場合
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2ヶ月前 | 訓練内容・カリキュラムの決定 |
| 1.5ヶ月前 | 訓練実施計画書の作成 |
| 1ヶ月前まで | 訓練実施計画届の提出 |
| 訓練期間 | 訓練の実施、日誌の記録 |
| 訓練終了後 | 申請書類の準備 |
| 終了後2ヶ月以内 | 支給申請書の提出 |
| 申請後2〜3ヶ月 | 審査・支給決定 |
よくある質問(FAQ)
Q: 助成金の申請に費用はかかりますか?
A: 助成金の申請自体は無料です。ただし、書類の取得費用(登記事項証明書など)や、社労士に依頼する場合の報酬は必要です。
Q: 複数の助成金を同時に申請できますか?
A: はい、要件を満たせば複数の助成金を同時に申請できます。ただし、同一の取組に対して重複して受給できない場合があるため、事前に確認が必要です。
Q: 申請してから受給までどれくらいかかりますか?
A: 助成金や申請時期により異なりますが、申請から2〜3ヶ月程度が一般的です。年度末は申請が集中するため、さらに時間がかかることがあります。
Q: 不支給になった場合、再申請はできますか?
A: 不支給の理由によります。書類不備の場合は修正して再申請できることもありますが、要件を満たしていない場合は難しいケースが多いです。不支給決定の通知書で理由を確認しましょう。
Q: 税務上、助成金は収入になりますか?
A: はい、助成金は法人税・所得税の課税対象となる収入です。ただし、消費税は不課税取引となります。詳細は税理士にご確認ください。
まとめ:失敗しない助成金申請のために
助成金申請を成功させるためのポイントをまとめます。
成功の5つのポイント
1. 期限を厳守する(事前届出・申請期限)
2. 要件を正確に把握する(対象者・対象経費・除外要件)
3. 書類を丁寧に作成する(記入例を活用、ダブルチェック)
4. 実施記録を残す(訓練日誌、面談シートなど)
5. 不明点は事前に確認する(労働局、ハローワーク)
今すぐできる3つのアクション
ステップ1: 自社で活用できそうな助成金をリストアップ
ステップ2: 各助成金の申請期限・要件を確認
ステップ3: 必要書類のチェックリストを作成
自社に合った助成金を探したい方は、助成金データベースで条件に合う助成金を探してみてください。
参考リンク:
*この記事は2026年1月時点の情報に基づいています。制度内容は変更される可能性がありますので、最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。*