この記事でわかること
- 人材開発支援助成金の7つのコースと選び方
- コース別の受給額と具体的なシミュレーション
- 申請から受給までの流れと必要書類
- 申請時によくある失敗パターンと対策
人材開発支援助成金とは?制度の全体像を解説
「従業員のスキルアップをしたいけど、研修費用が負担...」
「資格取得を支援したいが、どの制度を使えばいいかわからない...」
こんな悩みを抱える経営者・人事担当者の方に活用いただきたいのが、人材開発支援助成金です。
人材開発支援助成金は、従業員の職業能力開発を行う事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
なぜ今、注目されているのか?
- 人材確保の競争激化: スキルアップ支援は採用・定着の強力な武器に
- DX・リスキリングの必要性: デジタル化に対応した人材育成が急務
- 助成率の高さ: 経費の最大75%、賃金の最大100%が助成される場合も
- 幅広い研修が対象: 社内研修から外部セミナー、eラーニングまで
7つのコースと選び方
人材開発支援助成金には複数のコースがあり、目的に応じて選択します。
コース一覧
| コース名 | 対象となる訓練 | おすすめの企業 |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース | OFF-JT(座学研修等) | 初めて助成金を使う企業 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 有給の教育訓練休暇制度導入 | 自己啓発を促進したい企業 |
| 人への投資促進コース | デジタル人材育成、高度訓練 | DX推進・リスキリング実施企業 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新事業展開に伴う訓練 | 事業転換・新規事業を計画中の企業 |
| 建設労働者認定訓練コース | 建設業の認定訓練 | 建設業の事業主 |
| 建設労働者技能実習コース | 建設業の技能実習 | 建設業の事業主 |
| 障害者職業能力開発コース | 障害者向け職業訓練 | 障害者雇用を行う事業主 |
最も使いやすい「人材育成支援コース」
初めて人材開発支援助成金を活用する企業には、人材育成支援コースがおすすめです。
対象となる訓練例:
- 新入社員向けビジネスマナー研修
- 管理職向けマネジメント研修
- 業務に必要な資格取得講座
- 専門スキル向上のための外部セミナー
要件:
- 訓練時間が10時間以上
- OFF-JT(通常の業務を離れた訓練)であること
- 職務に関連した訓練であること
受給額はいくら?コース別の金額一覧
人材育成支援コースの助成額
| 区分 | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間あたり) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 45% | 760円 |
| 大企業 | 30% | 380円 |
※賃金要件・資格等手当要件を満たすと助成率がアップ
人への投資促進コースの助成額(デジタル人材育成)
| 区分 | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間あたり) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 960円 |
| 大企業 | 60% | 480円 |
【具体例1】新入社員研修を実施した場合
A社の例(IT企業・従業員25名・中小企業)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研修内容 | 新入社員向けビジネス研修(外部委託) |
| 受講者 | 5名 |
| 研修時間 | 40時間(5日間) |
| 研修費用 | 1人10万円 × 5名 = 50万円 |
助成額の計算:
| 項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 経費助成 | 50万円 × 45% | 22.5万円 |
| 賃金助成 | 760円 × 40時間 × 5名 | 15.2万円 |
| 合計 | 37.7万円 |
【具体例2】DX研修を実施した場合
B社の例(製造業・従業員50名・中小企業)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研修内容 | デジタルスキル習得研修(人への投資促進コース) |
| 受講者 | 10名 |
| 研修時間 | 60時間 |
| 研修費用 | 1人15万円 × 10名 = 150万円 |
助成額の計算:
| 項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 経費助成 | 150万円 × 75% | 112.5万円 |
| 賃金助成 | 960円 × 60時間 × 10名 | 57.6万円 |
| 合計 | 170.1万円 |
あなたの会社は対象?受給要件チェックリスト
対象となる事業者の条件
以下のすべてに該当する必要があります:
- 雇用保険の適用事業所である
- 職業能力開発推進者を選任している
- 事業内職業能力開発計画を作成している
- 訓練実施計画を作成し、管轄労働局に届出できる
- 訓練終了後2ヶ月以内に支給申請できる
対象となる訓練の条件
- 職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練
- OFF-JT(通常の業務を離れて行う訓練)
- 所定の訓練時間を満たしていること(コースにより異なる)
- 計画届出後に開始した訓練であること
こんな場合は対象外になります
以下に該当する場合は、助成金の対象外となります:
- 入社予定者(雇用保険被保険者でない者)への訓練
- 訓練開始日の前日から起算して1ヶ月前までに計画届を提出していない
- 通常の業務の一環として行われる訓練(OJT単独)
- 趣味・教養を目的とした訓練
- 法令で義務付けられている訓練(一部例外あり)
申請の流れ【4ステップ】
ステップ1: 事前準備(訓練開始の1ヶ月前まで)
やるべきこと:
1. 職業能力開発推進者の選任・届出
2. 事業内職業能力開発計画の作成
3. 訓練実施計画の作成
4. 管轄労働局への計画届の提出
必要書類:
- 訓練実施計画届
- 訓練カリキュラム
- 訓練を実施する者の経歴等を確認できる書類
- 対象労働者の雇用契約書等
ポイント:
訓練開始日の1ヶ月前までに計画届の提出が必要です。余裕を持って2ヶ月前には準備を始めましょう。
ステップ2: 訓練の実施
計画どおりに訓練を実施します。
実施時の注意点:
- 訓練日誌を毎日記録する
- 出席状況を正確に管理する
- 訓練内容の変更がある場合は事前に届出
- 経費の領収書・請求書を保管
ステップ3: 訓練修了後の書類準備
訓練終了後、支給申請に必要な書類を揃えます。
主な必要書類:
- 支給申請書
- 訓練日誌
- 出勤簿・タイムカード
- 賃金台帳
- 経費の支払いを証明する書類(領収書等)
- 訓練修了証明書
ステップ4: 支給申請(訓練終了後2ヶ月以内)
訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に支給申請を行います。
申請先: 管轄の労働局
審査期間: 通常2〜3ヶ月程度
申請時によくある失敗パターンと対策
失敗パターン1: 計画届の提出が間に合わない
よくある事例:
「4月から研修を始めたいのに、3月20日に計画届を出そうとした」
対策:
訓練開始の2ヶ月前から準備を開始。計画届は訓練開始の1ヶ月前が期限ですが、書類の修正等を考慮して余裕を持ちましょう。
失敗パターン2: 訓練時間が要件を満たしていない
よくある事例:
「半日の研修を5回実施したが、合計時間が10時間に満たなかった」
対策:
人材育成支援コースは10時間以上の訓練が必要です。カリキュラム作成時に合計時間を確認しましょう。
失敗パターン3: 訓練日誌の記録が不十分
よくある事例:
「訓練日誌をつけていなかった」「まとめて後から記入した」
対策:
訓練日誌は毎日記録することが原則です。訓練内容、時間、受講者の出席状況を正確に記録しましょう。
失敗パターン4: 対象外の経費を申請してしまった
よくある事例:
「研修会場への交通費や宿泊費を経費に含めてしまった」
対策:
経費助成の対象は、訓練に直接かかる費用(受講料、教材費等)のみです。交通費・宿泊費・食事代は原則対象外です。
失敗パターン5: 申請期限を過ぎてしまった
よくある事例:
「訓練終了後、忙しくて2ヶ月以上経ってしまった」
対策:
訓練終了日の翌日から2ヶ月以内が申請期限です。訓練終了後すぐに書類準備に取り掛かりましょう。
2026年度の注目ポイント
人への投資促進コースの拡充
デジタル人材育成やリスキリングを推進するため、「人への投資促進コース」が拡充されています。
特徴:
- 経費助成率が最大75%(中小企業)
- 賃金助成も高額設定
- eラーニングや定額制サービスも対象
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げや事業転換を行う企業向けのコースも注目されています。
対象となる訓練:
- 新たな分野で必要となるスキル習得
- 既存事業と異なる業務遂行に必要な訓練
よくある質問(FAQ)
Q: 社内講師による研修も対象ですか?
A: はい、社内講師によるOFF-JT訓練も対象となる場合があります。ただし、講師の資格要件や訓練内容について要件がありますので、事前に確認が必要です。
Q: eラーニングは対象になりますか?
A: はい、「人への投資促進コース」ではeラーニングや定額制サービス(サブスクリプション型)の訓練も対象です。ただし、受講履歴や進捗管理ができるシステムであることが必要です。
Q: パート・アルバイトも対象ですか?
A: 雇用保険の被保険者であれば、パート・アルバイトも対象となります。ただし、週の所定労働時間が20時間以上である必要があります。
Q: 同じ従業員に複数回の訓練を実施できますか?
A: はい、可能です。同一年度内でも、異なる訓練であれば複数回の申請ができます。ただし、助成金額には上限があります。
Q: 申請は自社でできますか?
A: 自社での申請も可能です。ただし、書類の要件が細かいため、初めての場合は社会保険労務士や助成金の専門家への相談をおすすめします。
まとめ:人材育成を助成金で加速させよう
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップを検討している企業にとって非常に有効な制度です。
申請成功の4つのポイント
1. 計画届は1ヶ月前まで(余裕を持って2ヶ月前から準備)
2. 訓練日誌を毎日記録
3. 対象となる経費を正確に把握
4. 訓練終了後2ヶ月以内に申請
今すぐできる3つのアクション
ステップ1: 実施したい研修・訓練の内容を整理する
ステップ2: 対象となるコースを確認し、要件をチェック
ステップ3: 管轄の労働局に相談、または社労士に問い合わせ
自社に合った助成金を探したい方は、助成金データベースで条件に合う助成金を探してみてください。
参考リンク:
*この記事は2026年1月時点の情報に基づいています。制度内容は変更される可能性がありますので、最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。*